11月5日投票の米大統領選は、民主党候補のハリス副大統領と共和党候補のトランプ前大統領が訴えを続けています。大統領や候補者の演説は、米国有権者であるかないかを問わず時に人を引きつけます。使われる言葉や振る舞いには、どんな工夫があるのでしょうか。国際金融マンとして米国勤務経験を持ち、さまざまな大統領スピーチを追いかけてきた東洋英和女学院大学の星野三喜夫学長(国際経営)に聞きました。
もっと知りたいアメリカ大統領選2024
アメリカ大統領選の行方に世界が注目しています。日々のニュースの疑問やこぼれ話や情勢を読み解くヒントなど、選挙をめぐって知りたいあれこれを、専門家のインタビューなどを通じてお伝えします。
――スピーチに関心を持ったきっかけは。
大学生の頃に英語の勉強でリンカーンのゲティズバーグでの演説を暗唱し、南北戦争を終結に導いた「人民の、人民による、人民のための政治をこの世から消し去ってはならない」という呼びかけに感動したのがきっかけです。米国勤務から帰国していた2009年には、ワシントンに200万人の聴衆を集めたオバマ大統領(当時)の就任演説を聴いて、有名になった「Yes, we can」こそありませんでしたが、宗教や人種の違いを超えて、ひとつになろうという訴えに鳥肌が立ちました。
――米国の大統領や候補者のスピーチはわかりやすく感じます。
わかりやすいですか? 確かにゆっくりで、語彙も理解しやすいかも知れません。しかし、就任演説のような作り込まれたスピーチは、ライターが練りに練っているので、さまざまな社会背景が織り込まれ、韻を踏んだりレトリック(修辞)を使ったりしています。これを完全に理解し堪能するのは簡単ではありません。
たとえばオバマ氏(民主党)の就任演説の「今日私たちが問うているのは、政府が大きすぎるか小さすぎるかではなく、政府が機能するかだ」という部分は、レーガン大統領(共和党)が唱えた「小さな政府」を暗に批判しています。気づく人は少ないと思います。
――19年にトランプ大統領(当時)のスピーチや書簡を分析されています。何が見えてきましたか。
公式のスピーチとそれ以外に…